山本亜以子 BLOG

2022.08.25

左脳ダウンとニルヴァーナ体験、そしてIAM(Ⅰ)

 

公安警官からIAMプラクティショナーに転身の山本です。

左脳奥で発生した脳卒中により方向定位連合野がダウンするとこのような体感があったといいます。

 

「大きなクジラが静かな幸福感で一杯の海を泳いでいくかのように、魂のエネルギーが流れているように思え…(略)、肉体の境界がなくなってしまったことで、肉体的な存在として経験できる最高の喜びよりなお快く、素晴らしい至福の時が訪れました。意識は爽やかな静寂の流れにあり、もう決して、この巨大な魂をこの小さい細胞のかたまりのなかに戻すことなどできはしないのだと、私にははっきりと分かっていました。」

 

IAMにご興味のある方なら一度はお読みになった方も多いと推測されるこの一冊。

「奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき」(ジル・ボルト・テイラー著)

 

 

この著者、テイラー博士は米国有数の脳神経解剖学者。統合失調症の兄が非常に独自的な視点で世界を体験していることに興味を持ち、この兄の見ている世界を知りたいと思ったことをきっかけにこの分野の専門家となりました。

 

ハーバード大学医学部にて脳神経学の専門家として研究する一方で、NAMI(全米精神疾患同盟)の理事として精神疾患に関する知識を広めるべく活動していた

正に充実した学者ライフ真っ盛りの37歳のある日の朝、

 

先天性の脳動静脈奇形による脳卒中により、左脳の高度な思考中枢等が侵されたのでした。

 

脳科学に対する第一級の好奇心と専門知識を有するこの魅力的な博士が、変容していく知覚と薄れゆく意識の中で自身が脳卒中を体験していることに気付き、自分の魂にこう懇願する場面に心を打たれます。本物の学者です。

 

「おぼえていてね、あなたが体験していることをぜんぶ、どうか、おぼえていてね!こののうそっちゅうで、認知力がこわれていくことで、まったくあたらしい発見ができるように‥‥」(「奇跡の脳」P48抜粋)

 

正に映画のような設定ですが、これは実話も実話です(というより、魂のブループリントが傑作過ぎる)。このテイラー博士、その後8年のリハビリを経て何とキャリア復帰。2008年のタイム誌で「世界で最も影響力のある100人」に選ばれています。

 

この体験が綴られたテイラー博士渾身の一冊が世に出たのは2009年。

今再びこの博士を思い出したのは、月刊ムーに同氏の最新作「ホール・ブレイン」

 

 

が紹介されていたためでした。いいぞ「ムー」!ナイス「ムー」!グッジョブ「ムー」!

※「ムー」に対する山本の個人的意見はこちら

 

…前置きが長くなりましたが、

こうしてテイラー博士の祈り叶い、後に全ての体験を思い出し、更に言語化に成功したことで

左脳の言語中枢や、方向定位連合野(自分の境界線や位置関係を認知する)がダウンしたことで右脳が目覚め、自分が宇宙と一体化した悟り・ニルヴァーナ体験※(テイラー博士の言葉です)が続いていたという貴重な体験をこの世界に持ち帰り、

左脳による思考の檻の中で苦しむ人類への貴重な体験記録が世に放たれたのでした。

 

左脳テクノロジーにより宇宙までロケットを打ち上げることも大変愉快ですが、今回は持病の発動によるものとは言え、

右脳テクノロジーによる心を入口としたソースへのアドベンチャーの方がよほど現代の地球人に有益であることは間違いありません。

 

さて、左脳と方向定位連合野がダウンした世界をどのようにテイラー博士が表現しているか以下簡単にまとめてみます。

 

◆左目の裏から脳を突き刺すような激しい頭痛が勃発(脳卒中の発生)⇒「心と身体の結びつきがどんどん脆くなっていくような感じ」⇒正常な筋肉の協調がなくなり、動作がぎくしゃくしてゆく⇒聴覚情報の異常「浴槽に水が入る音が耳をつんざく騒音のように」聴こえる。

 

◆「頭の中でのおしゃべり」が壊れ始める。思考のつじつまが合わなくなり、バラバラ、途切れ途切れに。すべてが「ゆっくりモード」に入ってきたと感じる。

 

◆「頭の中でのおしゃべり」が更に壊れていくと共に、「こみ上げる平和の感覚に満たされ」、「あたり一面の平穏な幸福感に包まれて」いる感じとなる。「意識は悟りの感覚、あるいは宇宙と融合して『ひとつになる』ところまで高まり…」しかしそれは「家路をたどるような感じで、心地よい」感覚だった。

 

◆自分の身体が浴室の壁にもたれているという認識はある一方で、「どこで自分が始まって終わっているのかという境界」が分からなくなり、身体が「流体である」と感じる。「自分の身体と他」との区別が不能の状態となる。

 

 

 

 

‥‥この時点で博士が感じていた感じというのが胸を打ちます。そのまま引きます(「奇跡の脳」P39)。

 

「うわ、わたしって、すごく変でびっくりしちゃう生きもの。生きてる!これって生きてるってことよね!海水がふくろにいっぱい詰まってるのよ。ここで、こんなかたちで、意識のある心があって、このからだは生きるための乗り物。ひとつの心を分け合う、数兆の細胞のかたまり。それが今ここで、命として栄えてるってこと。スゴイ、これってスゴイよね!わたしはさいぼうでできた命、ううん、器用な手先と認識の心をもった、分子でできた命なんだわ!」

 

◆脳のおしゃべりが消え、過去と未来が霧散し、細胞たちが「私」を維持するだけのために、一瞬ごとに素晴らしく働いていることに魅惑されると同時に謙虚な気持ちになる。「私は生まれて初めて、生を謳歌する、複雑な有機体の構築物である自分のからだと本当に一体になった」感覚を得る(P40)。

 

「私」というものが、自分の想像の産物に過ぎなかったものであることを悟る(P99)。以前の自分としての自我の中枢が消え、以前のように考えることも感じることもなく、もう以前の自分でいる義務を感じなくなる(P93)。左脳の死を悲しむ気持ちはあったが、同時に大きく救われた気持ちがある(P94)。

 

◆37年間の生涯を多くの事を「やる」(Doing)ことに費やしてきたが、この時初めて単純にここに「いる」(Being)意味を知る。

「左の脳の『やる』意識から右の脳の『いる』意識へと変わっていったのです。小さく孤立した感じから、大きく拡がる感じのものへと私の意識は変身し…(略)、言葉で考えることをやめ、この瞬間に起きていることを…(略)。私が知覚できるすべてのものは、今、ここにあるもの。それはとっても美しい。」(P95)

 

◆関連性や順序の消失。時間の感覚の消失。飛び飛びの瞬間の間を漂っているような感じになり、1と2とか、AとBの間の繋がりが消える(P55)。あらゆる「今」の瞬間が新鮮に感じられ、振り向くと新しく豊かな別の一瞬に包まれる感覚。過去の詳細は残像や残り香のように、スーッと消えてしまう(P151)。

 

◆エネルギーによる物の見方の発露。人には「エネルギーを与えてくれる人」と「エネルギーを吸い取る人」がいることが分かる。医療従事者は特に、後者になってはいけない(P121)。

 

◆回復することに意味が感じられなくなる。むしろ「今現在の、永遠の流れに漂うような幸福感…(略)、至福の時に包まれた恍惚状態の中」にとどまり続けていたいと感じるようになる(P120)。魂が宇宙と一つであり、まわりの全てのものと一緒の流れの中にいることを感じること、そして特に自身の存在の根底から溢れる、深い内なる安らぎを感じ続けていたいと望む(P121)

 

…その後、8年のリハビリを経てキャリア復帰を果たしたテイラー博士。 

左脳が判断力を失っている間に体験していた神のような喜びと安らぎと静けさ。この状態は、いつでも、誰でもつかむことができ、涅槃・ニルヴァーナの体験は右脳の意識の中に存在するものであり、どんな瞬間でも脳のその回路にアクセスすることができれば誰でも体験できるものであるという確信を得ました。

 

つまり本書の原題でもある“my Stroke of Insight”(脳卒中によって得られた新たな発見)とは「頭の中でほんの一歩踏み出せば、そこには心の平和がある。そこに近づくためには、いつも人を支配している左脳の声を黙らせるだけでいい。」(P179)のであり、このことを人々に広めること、そしてあらゆる脳障害に苦しむ人々の精神構造の理解を助け、またそうした人々をケアする人にも役立つようにと、最大限の愛とエネルギーを込めて本書が発行されたのでした。

 

今回のブログの直接のテーマではないので割愛しますが、本書は脳卒中の兆候や、脳神経系に問題のある人々とそうした方々をケアする人々へ向けられた良質な情報にも溢れており、たぐいまれな良書と言えます。

 

では、いかにすれば人は右脳の意識の中に存在する、「その回路」に近づくことができるのでしょうか。

 

Ⅱへ続く

 

 

 

 

 

※脳卒中当日のテイラー博士の脳(P52)

 

間脳活性の110番・Whale Cloudご相談窓口】

🐳IAM施術

🐳各種ライオンあくびクラス

全てを見る

PAGE TOP