山本亜以子 BLOG

2022.01.12

あくび関連書籍・リンク③

 

公安警官からIAMプラクティショナーに転身の山本です。

あくびに関してはこれまで何冊か()()ご紹介させていただきましたが

先日(昨年)図書館である本を探している時にたまたま目に入った別の本がありました。

「あくびはどうして伝染するのか」

 

 

著者は、米・メリーランド大学(ボルティモア・カウンティ)の心理学と神経科学の教授ロバート・R・プロヴァイン氏(2013年出版)。

 

主な研究分野は人間の進化。特に「これまで無視されてきた人間の本能、原初的な行動について精力的に研究」とのことで、あくびについても米国のメディアで取り上げられたことがあるようです。

 

この本には、あくびの他にもしゃっくりやくしゃみなど様々な項目があり、

※ちなみに、プロヴァイン教授はくしゃみを「素早いあくび」とし、くしゃみの起源はあくびにあると提唱しています。

 

メインのあくびだけちょっと立ち読みして帰ろうと思ったのですが、だんだん深みにはまってしまい、結局借りて帰ってしまったのでした🤣

 

以下はほとんど自分のメモ代わりに、興味深いと感じた箇所を羅列してみます(本書を読まなくてもこれを読めばあくびに関する部分はだいたいまとまっている…(はず)。

 

冒頭にこんなことを書くのも不謹慎ですが、私がこの本で一番価値があると思った箇所はむしろ巻末の索引部分

 

プロヴァイン教授は、冒頭のあくびの章(P19~46)だけでも、世界の39件もの文献や論文を引用していることに驚かされます。

 

特にP241の注釈には「ワルシンスキが編集した本(2010)には代表的な研究者たちの報告が取り上げられ、現代あくび科学の優れた入門書になる。彼のウェブサイトには、分散して不明瞭になりがちなあくびの文献が豊富に含まれている(以下略)」との記載があり、その添付されているURL(こちら)をちょっと覗いてみましたが、ここを読んでいるだけで一年終わってしまいそうなくらいのボリュームがあります。宝の宝庫である可能性大です。

 

さて、以前(2021年5月)に駒川先生とご対談いただいたアンドリュー・ニューバーグ医学博士(リンク)が、対談の中で「あくびは伝染することから社会的な側面もあると言える。」とおっしゃられた際、

 

「…まあ確かにそうだけど、『社会的側面』だなんて大げさな」と0.5秒くらい秘かに思ったのでしたが、そのあたりのことを真面目に研究している先生方が存在していたことに驚きました。

 

プロヴァイン教授の本の中で言及されていた先生の一人は日本人でした。発達障害について研究している千住敦先生です。

 

千住先生によれば、伝染するあくびのメカニズムの機能不全が精神病理学的、そして神経病理学的症状に関与する可能性があるとしています。

例えば、自閉症スペクトラム障害の子供は、自然発生的なあくびはするが、あくびの伝染はみられないといいます。

 

同様に、スイスのチューリッヒ大学のハッカー博士らの研究によれば、統合失調症の人も伝染性のあくびに対する感受性が低いことを立証したとしていますが、

 

これらに対して、あくびの研究者ハインツ・レーマン博士は、あくびの増加が統合失調症の回復に関連しているとする主張をしていたそうです。

 

レーマン博士については故人であることが残念ですが、あくびが進化に寄与しているとする論文も探してみると確かによく出てきます(リンク)。

※出典~

Lehmaan, H. E. 1979, Yawning, a homeostatic reflex and its physiological significance. Bulletin of the Menninger Clinic, 43,123-136.

 

…さて、最初はそのつもりはなかったのに、現在ではあくびの教授としても知られるようになったプロヴァイン教授。

 

プロヴァイン氏によれは、あくびについて不可欠な動作を調べてみたところ、鼻をつまんでもあくびはできるが、歯を食いしばった状態であくびはできないことからあくびはどうしても大きく開いた顎を必要とする複雑な運動パターンであるとしています。また、目を開けたあくびも困難とのこと。普段あまり意識しませんが、本物のあくびをしてる時は、涙、唾液が分泌され、中耳のエウスタキー管が開き、心臓血管、神経筋、呼吸器の運動を伴い、非常に多くの筋肉が関与しているため、関係しないものを挙げる方が簡単かもしれないということです。

 

あくびは脊椎動物固有の動作であり、胎児でもあくびをすることが知られていますが、オランダのJ・I・P・ド・フリース博士らは、超音波を使って発育中の胎児のあくびと伸び運動を追跡し、結果として早くも妊娠第一期の終わり(約7週頃)にはあくびと、それと同時に伸び運動が観察されたとしています。IAM/ライオンあくびで行うように、あくびと伸びとは本来セットなのでしょう。

 

なお、延髄(脳幹)しか持たずに生まれる無脳症の人にもあくびはみられることから、自然なあくびの神経回路は脳幹にあることは間違いないようです。

 

また、伝統的なあくびの理由「過剰なCO2の排出、あるいは酸素不足」については、空気中のCO2の100倍以上の濃度を呼吸してもあくびが増加しなかったというプロヴァイン教授自身の実験結果から完全に否定しています。

 

プロヴァイン教授は、神経再生や治療に利用できることなのかは分からないとしているものの、あくびは脳と麻痺した手足に神経を分布する脊髄運動系中の、無意識によりコントロールされている部分を明らかに活性化すると記載しています。

 

その一例として、少し古いのですがイギリスのサー・フランシス・ウォールシュという神経学者が、片まひの人があくびをする時に麻痺している側の腕が勝手に上がって動くことを発見し、このことは後に「関連反応」と呼ぶようになった件に言及しています。

 

結論として、あくびは少なくともこれまで研究されてきたものの結果として、生理学的なこと「睡眠から覚醒への移行、脳の冷却、意識レベルの増大(記載されています)」から同期化という社会的なものまで多様であるとみられ、

 

プロヴァイン教授自身が考えるあくびの機能としては

「行動的あるいは生理的状態の変化に対する反応、あるいは変化を促すもの」、「それは眠気、覚醒、攻撃性、脳の温度、あるいはまだ認識されていない状態の変化」

あくびとそれに関連する伸びは私達の生理機能を刺激してこれらの移行を促進する大規模な神経と筋肉のそして呼吸の動作だ。人間では、これらの変化が伝染して集団に及ぶ。」

 

と締めくくっており、これは奇しくも

口を大きく開けながらストレッチを行うことで、あくびの効能が促されるというIAM/ライオンあくびで行うあくびストレッチについての説明にもなっていると言えます

 

更に、あくびには「真価を認められていない力がある」と機能の詳細を解明中とした上で

「あくびは驚異的な現象、診断手段、そして社会的行動の神経学的基礎に関する洞察をもたらす。」

となかなか壮大な表現であくびの章を終えており

“なんだか凄そうな何かが隠されていそうだけど、まだ分からないんだよね”という歯がゆさが感じられます。

 

我々としてはIAM・ライオンあくびを通して、臨床現場からあくびの謎をますます追究してゆきたいところです。

 

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